初心者向けクリーンルーム入門:用途や分類、清浄度を保つためのポイント
工場や医療機関など、より清潔な環境を確保するために用いられる設備がクリーンルームです。製品の品質や安全性を確保し、製造プロセスの信頼性を向上させることができます。
この記事では、クリーンルームの基本的な用途や分類、および清浄度を保つためのポイントについて、なるべくわかりやすく解説しています。
<目次>
クリーンルームの概要
クリーンルームは、特定の要求に応じて室内の汚染物質を制御するための特殊な環境です。その主要な役割は、製品の品質を確保し、製造工程の一貫性を保つことです。
まず、クリーンルームがどのようなものであり、なぜ必要なのかについて詳しく解説します。
クリーンルームとは
クリーンルームは、微粒子や有害物質の含有量が極めて少ない清浄な環境を維持するための特別な施設です。これらの施設では、主にフィルターとエアフローシステムを用いて外部からの微粒子の侵入を制御します。
また、気流の管理も重要で、クリーンルーム内の空気が均一に流れるように設計されています。これにより、微粒子が特定の場所に溜まることを防ぎます。
なぜクリーンルームが必要なのか
クリーンルームは製品の品質と安全性を維持するために欠かせない環境です。汚染物質や微粒子は製品の品質に大きな悪影響を与える可能性があるため、これを防止するためには清浄な環境が求められます。特に医薬品や食品業界では、異物混入を防ぎ、安全で高品質な製品を提供するためにクリーンルームが必須となります。
クリーンルームの清浄度クラスとは
空気中の微粒子の量がどれくらい少ないかによって規定する指標を、クリーンルームの清浄度クラスといいます。これにより、どの程度清潔な環境が保たれているかを判断できます。
クラスは主にISO規格と米国連邦規格が基準として使われることが多く、ISO規格ではクラス1から9までの9種類があります。数字が小さいほど、微粒子の量が少なくなり、より安全で清潔な環境であるとされています。
例えば、ISOクラス1では微細な粒子すら存在がほとんどなく、厳密な管理が行われている環境です。このため、半導体製造や電子部品の製作など、極めて高い清浄度が求められる業界で使用されます。一方、ISOクラス9は比較的緩やかな規定で、大量生産品の製造や一般的な医薬品の製造環境で使用されることが多いです。
しかし、低いクラスを維持するには高額な費用がかかるため、業界によって求められる清浄度クラスが異なることがあります。コストと清浄度のバランスを考慮したクラスが適用されることが多いです。
クリーンルームの気流方式
クリーンルームの気流方式には、大きく分けて非一方向流方式、垂直一方向流方式、水平一方向流方式の3種類があります。
・非一方向流方式
非一方向流方式は空気がランダムに流れる形式のクリーンルームです。比較的高い清浄度が求められないクリーンルームに適しています。
・垂直一方向流方式
垂直一方向流方式は、天井から床へと垂直方向に均一に空気が流れる形式のクリーンルームです。例えば、半導体の製造やバイオテクノロジーの研究施設など、より高い清浄度を要求される現場で用いられることが多いです。
・水平一方向流方式
水平一方向流方式は、クリーンルーム内の空気を水平方向に一方向に流す方式です。クリーンルームの一方の壁からフィルターを通して清浄な空気を送り込み、反対側の壁から排出します。垂直一方向流方式と同じく、より高い清浄度を要求される現場で用いられる方式です。
【用途別】クリーンルームの種類
クリーンルームはその用途に応じてさまざまな種類があります。この見出しでは、インダストリアルクリーンルームとバイオロジカルクリーンルームの特徴と役割について詳しく解説します。
インダストリアルクリーンルーム(ICR)
インダストリアルクリーンルームとは、産業用途に特化したクリーンルームのことです。このクリーンルームは、製品の製造過程で微小な粒子や汚染物質の混入を防ぐために設計されています。特に半導体業界では、1つの微粒子が製品の動作不良を引き起こす可能性があるため、より厳格な管理が求められます。
バイオロジカルクリーンルーム (BCR)
バイオロジカルクリーンルームとは、生物学的な実験や製造に特化したクリーンルームのことです。このクリーンルームは、微生物や細菌などによる汚染を防ぐために設計されています。具体的な使用例としては、医薬品の製造や病院の手術室、遺伝子研究などです。こういった場面では微生物による汚染が大きなリスクとなるため、高度なクリーンルーム環境が必要とされます。
クリーンルームの環境を維持するために守るべき4つの原則
クリーンルームの効果を最大限に発揮するためには、良い環境を常に保つことが必須です。今回は、クリーンルームの環境を維持するために守るべき4つの基本的な原則について詳しく解説します。
異物を持ち込まない
クリーンルームの清浄度を保つためには異物を持ち込まないことが基本です。外部から異物が持ち込まれることで、クリーンルーム内の清浄度が低下し、特に製造工程や研究開発において重大な影響を及ぼす可能性があります。
例えば、クリーンルームで作業をする際に、材料や機材を持ち込む場合があります。しかし、それらに微粒子が付着していると、クリーンルーム内に微粒子が持ち込まれてしまいます。このため、材料や機材をクリーンルームに持ち込む前には十分な清掃が必要です。
また、作業員がクリーンルームに入室する際には、専用のクリーンウェアを着用し、エアシャワーや粘着クリーナーを利用して体や衣服に付着している微粒子を除去しましょう。
異物を発生させない
クリーンルーム内では異物を発生させる行為を避けることが重要です。防塵服やヘアネットの着用は基本的な対策となります。これにより、人間から発生するチリやホコリを最小限に抑えることができます。
さらに、クリーンルームで使用する素材や設備も低発塵性(細かいチリやホコリが発生しづらい)のものを選ぶことが推奨されます。機器や工具も同様に、クリーンルーム用の専用製品を使用すると効果的です。
異物を堆積させない
クリーンルームの清浄度を保つためにも異物が堆積させない環境が重要になります。異物が堆積すると、それが二次汚染の原因となり、製品の品質や性能に悪影響を与える可能性が高まるからです。
異物を堆積させないためには、定期的な清掃とメンテナンスが必要です。さらに、異物が堆積しないよう、なるべくすき間や溝をつくらないようにクリーンルーム内を設計することも有効な対策の1つとなります。
異物を排除する
異物がクリーンルーム内に発生した際には、迅速に排除することが重要です。万が一異物が入り込んだ場合でも、速やかに取り除ける体制が整っていれば、その影響を最小限に抑えることができます。
異物を排除するための具体的な対策として、まず空気清浄機の導入が挙げられます。また、高性能なフィルターを利用した換気システムを設置することも有効です。これにより、外部からの異物の侵入を防ぎつつ、内部の空気を常に清浄に保つことができます。
品質維持のためクリーンルームの環境を整備しよう
この記事では、クリーンルームの概要および用途と分類、さらにその清浄度を保つための重要なポイントについて詳述しました。
これらの知識を理解し、実際にクリーンルームで働く際や設計・管理する際に取り入れましょう。クリーンルームの環境を厳密に維持するための具体的な手順や管理方法を実行に移すことが、成果物の品質を維持するカギとなります。
クリーンルーム内でのワイピングに
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